感情表現を用いた説得対話システム

石川葉子 (1551008)


対話において,自分の感情を表現し,相手に伝えることは,互いの意思疎通を図るため有効な手段の一つである. 特に,説得や交渉の場面においては,説得者が感情をあえて表現することで,相手の振る舞いや考えに強い影響を与えることが分かっている. 一方,近年行われている対話システムの研究において,システム自身が持つ目標を達成するため,システムがユーザの説得を試みる説得対話システムの研究が盛んである. 説得する側である対話システムが論理的な説明を用いることで,ユーザの説得成功率の向上に寄与することが知られている. また,論理的な説明を用いること以外に,ユーザの感情を考慮した説得を試みることで,説得の成功率が向上すると言われており, このような感情を考慮した説得対話システムの研究では,ユーザの感情に基づき,システムが適切な説得を行うことの検討がなされてきた. しかし,人間同士の説得においては,説得者は相手の感情を考慮するだけでなく, 自身も感情を表現することで説得を優位に進められることが知られている. そこで,本研究では,説得者であるシステム自身が感情状態をもち,感情を表現しながらユーザの説得を試みる説得対話システムを提案する. このため,まず感情表現を含む説得対話コーパスを収集し,各発話文に対し感情状態とユーザの受諾度合いのアノテーションを行った. 収集したコーパスをもとに,システムはユーザの受諾度合いに応じて感情状態を遷移させ, 遷移したシステム自身の感情状態に基づき,応答文を選択することで説得を試みる. クラウドソーシングを用い,提案する説得対話システムの評価実験を行った結果, 感情表現を用いることによる有効性が示唆されたことを確認した.