データ収集・解析とサステナビリティを考慮したユーザ参加型モバイルセンシング基盤の設計と評価

松田 裕貴(1551103)


ユビキタスコンピューティングシステムの浸透により, いつでもどこでも環境や人の状況を把握,解析し,ユーザへと還元することが可能となりつつある. これを社会全体に適用するために,より効率よく環境や人をセンシングする手法として, 本研究では,ユーザ参加型センシングに着目している.

ユーザ参加型センシングは, 一般ユーザが各々が持つセンシング端末を用いてセンシングに参加することから, ユーザの測定環境や使用端末の個体差、精度差を補正・校正しなければならないという課題(センサデータの校正・解析)や、 参加者となる一般ユーザに対し,センシングに参加する``意義''や``モチベーション''を与え, センシングへの参加を促したり,離脱を防いだりする必要があるという課題(システムの持続可能性:サステナビリティ)が存在する.

本研究では,上記の課題を解決するために, 参加型センシングを作成・実施・評価する 「ユーザ参加型モバイルセンシング基盤」を開発している. 本論文では, このユーザ参加型モバイルセンシング基盤の設計・実装、 およびセンサデータ解析(照度センサを題材としたセンサ特性の相対的校正)機構の設計と実装について述べる.

ユーザ参加型モバイルセンシング基盤に対する評価実験を行った結果, 実装容易性については, 筆者が過去に作成したユーザ参加型センシングアプリと同等のシステムを, GUIの操作のみで実装でき, ゲーミフィケーションの設定変更なども容易に可能であることを確認した. システム性能(スケーラビリティ)については, 分散処理を導入することによる応答性能の向上を確認した. センサデータ解析(センサ特性の校正)機構に関する実証実験では, 提案手法を適用することにより,約90% の街灯において類似度の向上, つまり端末間のセンサ特性の差異が削減されるという結果が得られた.