私服部変形計測センサを利用した指先力推定

向山 寛人 (1451107)


主に皮膚の受容器から得られる触覚情報は,物体操作における対象物の状態把握や能動的な触動作による物体表面のテクスチャ情報取得に用いられている.自然な状態で触覚情報を計測する技術は,ヒトの感覚運動制御機能を解明する上で重要な技術であると言える.

本ロボティクス研究室において,指の爪側に装着するセンサを用いて指腹部の変形を計測し,伝達関数モデルによって指先に発生する初期滑り量を推定する手法をすでに提案した.しかし,提案手法では推定は初期滑り量に限定されており,推定もオフラインであるという制限があった.

本研究では,指腹部の変形に基づいて,これまでに可能なことが示唆されていた初期滑り量の推定に加えて,指先に生じているせん断力と押付け力を推定する手法を提案し,伝達関数と数学的に等価なモデルである状態空間モデルを用いてオンラインで力を推定する手法について提案する.状態空間モデルを用いて推定するには接触の初期状態の推定が必要なため,回帰モデルを用いて推定する手法について提案する.実際に複数の被験者によるデータ計測を行い,指の移動速度や押付け力の提案手法による力の推定精度へ影響について検証し,状態空間モデルを用いて,オンラインでせん断力と押付け力が推定可能であることを示す.