4次元光線空間編集のためのグラフカットによる領域分割

三原 基(1451104)


近年,シーンを画像ではなく,光線空間として記録することを可能とする光線空間カメラと呼ばれるデバイスが登場した. 光線空間カメラによって取得された光線空間の用途は,撮影後のフォーカス位置の合わせ直しや,シーンの3次元復元など多岐にわたる. しかし現在広く行われている画像編集に相当する光線空間の編集技術の確立は,挑戦的な課題であると位置づけられている. その理由として,光線空間が持つべき一貫性が,編集によって損なわれないことを担保する必要があること, 現在のコンピュータの入出力系は2次元の情報を扱うことを前提としているが,光線空間は4次元の情報であるため, ユーザがソフトウエアに対し,編集の意図を伝えることが難しいことなどが挙げられる.

そこで研究では,4次元光線空間の編集技術の確立のために,特に,従来の画像編集ソフトウエアにおける領域選択と同様のユーザ入力のみで,光線空間の半自動的な領域選択を実現することを目的とする. この半自動的な領域選択は,光線空間の領域分割を行うことによって可能となる. 本発表においては,光線空間の領域分割を実現する手法について述べる. 提案手法では,光線空間と,光線空間中の画像に対してユーザにより与えられる正解ラベルを入力とし, 画像などの領域分割問題に対して用いられるグラフカットを拡張することによって,光線空間の領域分割を行う. このとき,光線空間がもつ一貫性が,編集によって損なわれないことを担保するため,空間方向と角度方向に隣接する光線を定義し, これらの隣接光線について,色が近ければ同じ領域に属するという制約を設ける. また,領域分割の精度向上のために,色情報に加えて,光線空間から推定可能な幾何情報を用いた尤度を定義し, グラフカットの枝重みとして適用することによって,その精度向上を目指す. 本研究では,提案手法を評価するために,複数の光線空間データセットに対して,複数の手法と提案手法を用いて,光線空間の領域分割を行う. 発表においては,提案手法は4次元光線空間の領域分割が可能であること, 既存手法と提案手法の領域分割精度を示すことにより,提案手法が既存手法に比べて高精度な領域分割が可能であることを述べる. さらに,本研究の目的である,従来の画像編集ソフトウエアと同様の入力のみで光線空間全体の半自動的な領域選択が可能となることを述べ, 光線空間に対して,効率的に編集を加えることができることを示す.