本発表では,インターネット断絶状況において,アプリをその場で拡散して被災者に与える手法として,Recurshareを提案する. Recurshareでは,最初の配布者の周囲にいる人々にアプリを配布し,それを受け取った人々が更にその周囲の人々に配布することを 繰り返すことで,再帰的にアプリを配布する.そのため,平時におけるRecurshareの導入は,災害時アプリケーションと Recurshareをインストールするだけで完了する.
さらに,接続の手間を最小限に抑えたネットワーク構築手法を提案する. これには,近年登場したBluetooth Low Energy(BLE)を利用する.BLEは親機と子機の役割を持ち, 親と子の端末で接続を行うことで通信を行う.しかし,子機の役割を持っている端末は最新のモデルに限られ, 現行のスマートフォンの多くはBLEの親機の役割しか持たない.本研究では,子機の役割を持つ端末にメッセージ転送の 仕組みを持たせることにより,親機同士の通信を可能にする手法を提案し,2つのアプリケーションに対して実装を行った. 1つめは避難所を想定し,Recurshareによるアプリ拡散の後に,接続した端末同士でチャットを行うことを想定した RecurChatである.2つめは,地すべり検知を目的としたセンサネットワークアプリケーションのDownhillである. スマートフォンを線形的に配置し,BLEネットワーク構築手法を用いて相互接続することにより,麓に設置したサーバに対して センサ値を届けることで地すべりの検知を行う.最後に,それぞれのシステムについて可用性を評価した.