精神疾患のディメンジョン探索の試みとしての衝動性と強迫性の行動および臨床指標の関係の定量的検討

町田宗丈 (1451097)


遺伝学や神経科学の目覚しい発展により,脳の構造や機能障害が精神疾患の要因になることがわかってきていることから, 遺伝学,神経科学,行動科学の知見を元に精神疾患分類を再定義する動きが活発になってきている. アメリカ国立精神衛生研究所(NIH)によって開発されている研究領域基準(RDoC)もその一つであり, これまでカテゴリー方式によって分類してきた精神疾患をディメンジョン方式によって捉える枠組みの構築を目指している.

Robbinsらが提唱した,複数の精神疾患をディメンジョン的に捉えるために"強迫性"と"衝動性"に着目する試みは, 精神医学だけでなく神経科学でも注目を浴びているが,まだ定量的な評価をするには至っていない. そこで本研究では認知行動課題と精神疾患の臨床指標から"強迫性"と"衝動性"の関係性について調査を行った. その結果,損失に対する衝動性が強迫性に影響されることが示された. 強迫性は危険からの回避を基に持つ性質であるため,損失に対して抑制性の影響を及ぼす結果を示したことが考えられる. さらに外界への強迫性は衝動性を抑制し,内界への強迫性は衝動性を増長させる働きがあることが示唆された. 疾患の重症度との関連を見出すことで各性質によるディメンジョン的な理解が深まることが考えられる.