スマートフォンを用いた心拍数予測に基づくウォーキング支援システム

前中 省吾 (1451095)


近年ウェアラブデバイスの普及により, より安価で手軽に心拍数や脈拍数等の生体情報の取得が可能となっている. しかしこれらのデバイスは,過去および現在の心拍数を計測・表示する機能しか持たない. そこで,現在の技術では実現できていない,ある経路を歩行した際に, どの程度の心拍数,負担度になるのかを予測して, 事前に歩行計画(経路,速度)を推薦する機能の実現を目指す.

本研究では,先行研究である心拍数推定モデルをベースに, 新たに複数被験者による歩行実験を行い, 歩行経路の勾配と想定歩行速度から心拍数変化を予測するモデルを構築し, 任意の経路を歩行する際の心拍数変化の予測結果から, 最適な歩行経路を推薦する手法を提案する.

提案手法では,事前に地図情報等から入手可能な道路上の勾配や, 勾配から予測可能な歩行速度を,歩行時心拍数推定法を拡張したモデルへ入力することにより, 未歩行経路における心拍数変化を予測する. また,予測した心拍数を最大心拍予備能(HRR)を基に負担度に対応させ, ユーザ要求(ウォーキング時間,ウォーキング距離,消費カロリー等)と 負担度を目的関数のパラメータとして設定する. ユーザのプロファイル(性別,年齢,身長,体重,運動習慣等)と目的関数を使って, 複数存在する経路候補の中から最適な経路の絞り込みと歩行経路における各区間の歩行速度の計画を行う.

実際のウォーキングで計測したデータに,新たに作成した負担度モデルを適用した結果, 39人の被験者,3本の歩行ルートの組み合わせのいずれにおいても6.75拍/分以内の平均誤差で心拍数の推定ができた.

また,経路推薦では,最適な歩行経路として算出された経路は, 経路全体を通した負担度の平均値が29.5[%], 経路中における負担度の最大値が44.4[%]となり負担を抑えた状態で, ユーザ要求を満たす経路の推薦ができた.