平行二線路を用いた無線電力伝送における受電電力安定化

前川 拓也(1451094)


本発表では,平行二線式ワイヤレス給電方式において,受電電力安定化の手法を提案する. ワイヤレス給電に関する研究,開発が進められており,すでにいくつかの製品への実用化が図られている. それらのほとんどは,伝送距離や伝送効率の観点から,磁界結合方式に基づくものである. 磁界結合方式では,交流電源に接続された一次コイルから発生する磁界によって,端末に搭載された二次コイルに誘導された電流によって電力が伝送される.

さらに,現在ワイヤレス給電の新しい課題として,走行中給電が挙げられている. 走行中給電では,端末の移動エリアでの給電を補償するため,給電可能範囲を拡張する必要がある. 従来の磁界結合方式に基づく手法では,給電範囲の拡張に多数のインバータとコイルを配置する必要があり,システム全体が高コスト化,複雑化し,実用化が困難であると考えられる.

一方,給電エリアを容易に拡張できる手法として,平行二線式ワイヤレス給電が提案されている. この手法は,給電線となる二線路に交流電源を接続し,二線路付近の端末に電力を伝送するシステムであり,二線路を延長するだけで給電エリアの拡張できるため,従来手法よりも実用化が見込める. しかし,磁界結合平行二線式ワイヤレス給電では,二線路に電流定在波が発生するため,二次側の位置によって受電電力が動的に変動するという問題がある.

そこで本研究では,受電電力の変動を抑えるため,ダイバーシチ効果を活用した2つの手法を提案する. 一つ目の手法は,送電アンテナのダイバーシチ効果を活用し,電流定在波パターンが異なる二線路を二重化することで電力変動を緩和する手法である. 二つ目の手法は,受電アンテナのダイバーシチ効果に基づく手法で,電流定在波と電圧定在波の位相が 90 度ずれていることに着目し,それぞれの結合を組み合わせで電力を安定化する手法である. 理論式と実験結果により,各提案手法が受電電力の変動に有効であることが明らかとなった.

加えて,磁界結合と電界結合を組み合わせる手法において,二次側の負荷制御を行うことで所望の受電電力を達成できることを確認した. 一方で,繰り返し負荷制御を行うことで受電電力は所望の値に収束するが,制御過程での電力変動が観測される. そこで,電磁界分布と目的負荷が共に周期的に変化している点に着目し,電磁界分布を観測することで繰り返し負荷制御の初期値を最適化する手法を提案する. 実験結果より,繰り返し負荷制御の初期値を最適化することで,単純な繰り返し負荷制御過程の電力変動を抑えられることを確認した.