現在地情報を付与した観光地図が観光行動に与える影響

枇榔 晃裕 (1451088)


観光地の地図利用において,スマートフォン上での地図アプリが用いられることが増えてきている.その一方で,地図アプリでけでなく紙で配布されている観光地図を同時に使用する観光者が見られる. 観光地で配られる紙の観光地図は観光者向けに特化した情報がまとめられており,スマートフォンなどの携帯端末にアプリケーションとしてインストールされている地図はユーザの現在位置・方角が表示されていることが利点としてあげられる.紙の観光地図と携帯端末の地図はそれぞれの有用性が異なるため,2つの地図を見比べながら同時に使用することが増えてきている. 観光者向けに特化した地図にユーザの現在位置・方角を表示する,それぞれの有用性を統合した地図サービスがすでに提供されているが,観光者の観光行動にどのような影響を与えるのかについての評価は示されていない.

本研究では,配布されてる観光地図に現在位置・方角を表示した観光携帯電子地図が,観光中の地図利用に対してどのような影響を与えるのかについて評価を行った. 観光地で対照実験を行った結果,観光携帯電子地図に対して紙の観光地図とスマートフォン上の地図で地図の種類が同じであることで,現在位置特定の難易度を引き下げているために地図を見やすく感じることと,観光情報が記載された地図に現在地情報が示されることで地図の見比べをしなくてよいことで,観光情報が記載された地図と現在地情報が示された地図を使い分けなくてよく,1つの地図だけで十分な情報が得られることが好意的な反応の理由として多く寄せられた. さらに,観光中に道に迷ったのではないかという不安感が,一般携帯電子地図と紙の地図を用いた場合よりも観光携帯電子地図と紙の地図を用いた場合の観光において減少し,地図が見やすかったかという設問に一般携帯電子地図と紙の地図を用いた場合よりも観光携帯電子地図と紙の地図を用いた場合の観光においてより高い得点が得られた. 一方,一般携帯電子地図を用いた場合と観光携帯電子地図を用いた場合で観光中に地図を見る時間に差はなかった.観光携帯電子地図を用いた場合では紙の観光地図を使う時間が一般携帯電子地図を用いた場合と比べて少なくなったが,観光携帯電子地図を用いた場合でも紙の観光地図を使用する場合があることが分かった. 実験の結果から,配布されている観光地図を電子化し,現在位置・方角の情報を追加することの利点を一般携帯電子地図との比較により示した.