運動視差を再現した事前生成型拡張現実感

西崎 優弥 (1451080)


 事前生成型ARは,あるシーンを事前に撮影した全方位画像にあらかじめ仮想物体を合成しておき,端末内のセンサ等より取得した端末の方向に応じてその画像を切り出し提示することで,ジッタのないARを実現している.ただしこの手法は,撮影された地点からの景観のみしか提示できず,端末の移動に伴う運動視差が再現されないため,ユーザの移動時には臨場感が低下するという問題が残されていた.

 本発表では,事前生成型ARに任意の視点からの映像を生成する自由視点画像生成技術を組み合わせることで端末の移動に応じた運動視差を再現する,新たな事前生成型ARシステムを提案する.具体的には,カメラの姿勢情報の推定には従来の事前生成型ARシステムと同様に端末内蔵のジャイロセンサを用い,相対的な並進運動の推定には撮影画像上の少数の特徴点を用いる.これにより,低コストかつロバストにカメラ運動を推定し,これを用いて自由視点画像生成を行うことにより実時間で運動視差を再現する事前生成型AR画像の提示を実現する.

 実験では,従来の事前生成型ARを比較対象とした比較実験を行い,提案手法による運動視差再現効果およびユーザへの提示画像の品質評価を行うことにより,提案手法の有効性を検証する.また,本発表では,実験の考察及び今後の展望について述べる.