輝度情報と奥行情報の整合性を利用したエネルギー最小化に基づく移動計測された三次元点群からの移動物体領域の検出

髙部篤志 (1451064)


近年,屋外実環境の三次元モデルを用いたアプリケーションとして,バーチャルアースや,ドライビングシミュレータなどが利用されている. これらのアプリケーションでは,固定された三次元形状と表面テクスチャを利用したモデルベースドレンダリングや,視点位置に応じて三次元形状やテクスチャを変更するイメージベースドレンダリングにより任意の視点からの映像提示が実現されている. このような手法で用いられる屋外環境の三次元形状および画像群はレーザレンジファインダ,カメラ,GPS・IMU 等を組み合わせた車載システム等を用いて取得されることが多いが,計測対象環境に人や車などの移動物体が存在した場合には,計測データに移動物体が残るため,任意の視点からの映像を生成した際に不自然なテクスチャが生成されるという問題がある. これに対し,歪みの無いモデルを生成することを目的として,計測データからの移動物体検出・除去を行う手法に関する様々な研究が行われている. しかし,検出精度向上のために移動物体の検出範囲が限定されたり,未知の移動物体への対応が困難であることや,背景に平面仮定をおいたり,カメラの移動を制限するなど,汎用性が低いといった問題点や,同一経路を複数回計測しなければならないため膨大な撮影コストがかかるといった問題点があった.

本研究では,一回の移動計測により得られる同期の取れた,三次元点群,画像群およびカメラの位置姿勢情報を入力とし,輝度情報と奥行情報の整合性を統合したエネルギー関数を最小化することで三次元点群中の移動物体検出を行う手法を提案する. 提案手法では,静止物体の表面の明るさや形状は短時間では変化しないことに着目し,基準フレームにおいて観測した三次元点群を他のフレーム上に投影し,複数フレーム間の輝度値と奥行値の差に基づき移動物体らしさを評価する. ここでは,実際の計測データにおける輝度値および奥行値の差と,手動でラベル付けした移動物体との関係から,移動物体らしさを評価する関数を設計し,これをエネルギー関数のデータ項として用いる. また,各点の隣接点との奥行値や輝度値の差に基づく平滑化項を設計する. 輝度情報と奥行情報を統合したエネルギー関数を最小化するラベル付けを求めることによって,移動物体の検出精度の向上を図る.

本発表では,提案手法による移動物体領域検出実験により検出された移動物体の例を示す. 実験では,車載型の全方位レーザーライダーユニット (Velodyne),カメラ,GPS・IMU により計測した屋外環境データを用いる. これらの実験結果を示し,提案手法の有効性に関する検証結果を発表する.