辺集合クラスタリングを用いた二分決定グラフの変数順序付けアルゴリズムとネットワーク信頼性評価への応用

園田 晃己 (1451062)


ネットワーク信頼性評価とは,グラフ中の辺に静的な故障確率が設定されている場合に2頂点間が通信可能である確率を求める問題である.信頼性評価の厳密計算手法として二分決定グラフ(BDD)に基づく計算法が知られている.

二分決定グラフは論理関数を効率よく表現できるデータ構造である.その生成アルゴリズムであるフロンティア法ではグラフ中の全ての辺に対して二分決定グラフにおける場合分け順序を事前に指定する必要があるが,その順序によって生成される二分決定グラフの大きさが大きく変化し,計算時間や使用メモリ量に影響することが知られている.

本発表の貢献は以下の二点である.一点目は辺集合クラスタリングを用いた辺の処理順決定法の提案によって,二分決定グラフの大きさを小さくし,信頼性評価の計算を高速化である.本手法では,グラフ中の辺が密になっている辺集合をクラスタに抽出し連続して処理することでBDDの大きさを小さくする辺処理順を生成する.手法の効果を数値実験において既存手法である幅優先探索順と比較し,グラフによっては最大約954倍高速になることを示す.

二点目は,辺だけではなく頂点にも信頼性確率が設定されたネットワーク信頼性評価に向けた,ハイパーグラフを用いたフロンティア法の提案である.ハイパーグラフの場合についても辺の処理順決定手法を提案し,数値実験を通じてその効果を検証する.