多変量正規分布の共分散行列とその固有値の推定は,多変量解析における中心的な問題である.これらの推定の精度は固有値の重複に影響されることが知られている.しかし,その影響がどのようなものかは明らかでない.有限のサンプルサイズに対して推定を評価する方法として,学習係数と呼ばれる値を導出する方法がある.本研究では,固有値の重複が共分散行列や固有値の推定に与える影響を,学習係数の導出によって考察する.特に,共分散行列の固有値が最大固有値以外等しい spiled covariance model に対する推定を考える.そのために,まず固有ベクトルに関する周辺化に基いた縮小推定を定式化し,さらに2次元の場合について学習係数と固有値の関係を求めた.その結果,真の共分散行列の2つの固有値が一致する時に最も推定の学習係数が小さく,固有値の差がある値の付近で最大値をとった後に,最終的に最尤推定と同じ値に収束するという結果を得た.