電解磁界ハイブリッド結合によるワイヤレス給電システムの安定化

岡本拓也(1451029)


ワイヤレス給電は物理的な接触なしに1次側から2次側へ送電する技術である.特に,本研究室で提案されている平行二線路を送電アンテナとして用いる近傍界結合型給電方式は広域ワイヤレス給電方式として有効である.広域に給電することで,複数台の端末や移動体に向けての給電が可能になるが,制御情報や認証情報などのデータのやり取りが必要になる.

このシステムでは,2次側が自分の負荷抵抗を切り替えることによって1次側への反射波を変調することで通信することが可能である.しかし,高周波回路で構成するアンテナや共振器を設計する際,波長が回路サイズ程度まで短くなると,回路の入出力端を隔てる距離に応じて電流や電圧の値が異なるようになる.さらに,接続する回路間のインピーダンスの不整合により高周波信号が反射する.この進行波と反射波の干渉によって発生する定在波により,電磁界の大きさに空間的バラツキが発生する.この定在波の影響により2次側の位置によって負荷変調の精度が変化することが問題である.

本発表では定在波が存在している平行二線路ワイヤレス給電における通信品質の改善技術を提案する.まず,負荷変調による情報通信の特性を電磁界シミュレーションと実験により評価し,定在波の影響による通信品質の受電位置依存性を明らかにする.次に,この問題点を解決するため,電界結合と磁界結合を組み合わせたハイブリッド結合を用いて負荷変調することを提案し,その特性を理論解析と実験的検証により評価した結果を述べる.