ToFカメラの発光タイミング制御によるシーンのインパルス応答の推定

岡本貴典(1451028)


シーンに対して超短時間のインパルス光を照射した際に反射光として観測されるインパルス応答は,相互反射や散乱等の光学現象により変化するため,シーン解析の大きな手がかりになる. 近年では,数ピコ~数十ピコ秒の時間分解能でインパルス応答を推定する方法が提案されているが,計測するためには特殊な機材が必要となる.

本研究では市販のToFカメラを用いたシーンのインパルス応答の推定を目的とする. ToFカメラを用いることで,数十ナノ秒の露光時間の画像が撮影できるが,これは数メートルの光伝播に相当するため,時間分解能が不十分である. そこで,インパルス応答を高時間分解能で推定する手法を提案する. 高時間分解能なインパルス応答は,露光時間を短く設定し,発光タイミングを細かくずらすことで得られた反射光と照射波形の逆畳み込みにより推定することができるが,ToFカメラによる設定では限界がある. そこで,センサと光源をつなぐケーブルの長さを変化させる遅延回路により,ToFカメラの発光タイミングを微小な時間で制御し,様々な発光タイミングで得られた複数の画像を用いて計算処理することで仮想的に露光時間を短くしインパルス応答の時間分解能を向上させる. シミュレーションと実環境による実験では,ケーブルとロータリースイッチで構成される簡易な遅延回路による1ナノ秒の発光タイミング遅延と,ToFカメラによる5ナノ秒の露光タイミングの制御を組み合わせることで,1ナノ秒の時間分解能のインパルス応答を推定した.