果実内部の品質計測に向けた分光法と表面散乱モデルによる食味分布推定

岩口尭史 (1451014)


近年,青果商品の差別化のために,果実の内部品質を計測し品質保証することで,果実を高付加価値化する試みが行われている. 従来の品質計測では,果実の代表点の糖度を計測することによって,果実の品質が評価されてきた. しかし,果実の糖度には偏りがあるため,代表点のみの評価では不十分である. また,糖度は果実が含む糖の量を評価しているのに過ぎない.

そこで本研究では,食味そのものにより果実の品質を評価し,果実内部の食味の分布を推定することを目的とする. 本研究では,分光法による食味の計測手法を提案する. 従来の官能検査による食味の評価では,個人による評価基準のばらつきが問題であったが,提案手法では物理量である分光分布の計測から食味を推定するため,客観的な評価が可能となる. また,果物のような半透明物体の内部推定手法として,表面散乱モデルに基づく手法を提案する. X線CTなどで用いられてきた内部推定手法は,物体内で光線がであることを仮定しているため,散乱が起こる半透明物体には利用できない. 提案手法では散乱による光路の広がりを考慮した計測を行うことで,内部推定が可能になる. 最後に,分光法を用いた食味の内部分布推定手法を提案し,実物体の計測実験により提案手法の有効性を検証する.