光学的レプリカの実現に向けた書画の反射率と透過率の同時再現

浅田 繁伸(1451004)


和紙に筆と墨で書かれた書画は独特の反射・透過特性を有しているため光源環境によって見え方は大きく異なり, 和紙特有の風合いがあることが知られている. また, 書画の透かしは専門家による書画の文字解析のために利用されている. しかし劣化した書画の原本は厳重に保管されおり, それらの解析ができないことから原本の光学特性を忠実に再現する 光学的レプリカの実現が望まれている. そこで本研究では, 印刷された複数の紙を重ねて配置することにより, 書画の反射率だけでなく, 透過率を同時に 再現する光学的レプリカの作成手法を提案する. まず, 予め複数の紙に様々なパターンを印刷して重ね, 印刷パターンと反射率および透過率との関係を計測してルックアップテーブルに記録する. さらに, 計測した書画の反射率・透過率を再現するために印刷すべきパターンをルックアップテーブルを参照することで 任意の反射率と透過率を再現可能にする. 本手法で生成したレプリカの評価として, 書道作品を再現対象とした提案手法の定量評価,古文書を再現対象とした 検証実験を通して反射率と透過率の物理量誤差で有効性を示した. また, 人間の肉眼によるレプリカの主観的評価実験を行ったことで, 人間の知覚観点においても本手法の有効性が示された.