てんかん発作抑制に向けた皮質脳波からの発作予測手法の開発

秋澤 翔 (1451002)


てんかんは突然の発作が繰り返し発生する脳疾患であり,多くの場合は全身の激 しい痙攣や意識消失を伴うため患者は常に身の危険に晒される.そのような患者 の QOL を向上させるためにてんかん発作予測が長年研究されてきた.また近年 ではてんかん発作の抑制を目的とした局所脳冷却などの新しいてんかん治療法の 開発が進んでおり,患者の負担を最小限に抑えたままそれらの治療を行うという 目的から,てんかん発作予測の重要性がますます高まっている.しかしながら現 在提案されている手法は疾病の機序についての考慮がほとんどされておらず,精 度の再現性が保証されていないという課題が残されている.予測手法の改善のた めには,てんかん発作時の脳活動の同期現象などの疾病機序を考慮することが必 要である.本研究では,てんかん発作における脳の同期現象を考慮した予測を行 い,発作予測精度の向上を目指す.そのために Synchronization Likelihood の計算 から得られた脳ネットワークの情報を特徴量として用いて皮質脳波データの解析 を行い,その予測精度を従来手法と比較検討した.その結果,提案手法を用いる ことで従来手法よりも高い感度で発作を予測できることを確認し,てんかん発作 における同期現象を考慮することで,より正確な予測ができる可能性を示した.