光ピンセット技術における微小粒子の3次元位置推定法

藤原 一優 (1351094)


 光ピンセットは,収束レーザービームを微小物体へ照射し,光の放射圧を発生させることで,対象物の捕捉,操作を可能とする技術である.顕微鏡下で操作可能であり,対象物に対して非接触かつ非侵襲な操作技術である.3次元マニピュレーションや力計測,ソーティング技術に応用されているが,顕微鏡下の捕捉対象の位置決定は,現状面内方向位置にとどまっており,光軸方向位置は把握していない.3次元的な捕捉や操作が自由に行える光ピンセットにおいて,対象物の焦点面内方向位置だけでなく光軸方向位置を計測し把握することは有用である.そのため先行研究において,顕微鏡観察下の粒子像の大きさ変化から光軸方向位置を推定する手法が提案されている.しかし,対象粒子の粒径が既知のときのみ推定可能で,未知なものには適用できなかった.
 そこで本研究では,球形粒子の粒径と光軸方向位置の違いにより顕微鏡観察時の粒子像の焦点ボケの程度が異なることから,その光強度分布パターンを解析することで,粒子の粒径及び光軸上位置を推定する手法の開発を行った.焦点面内位置推定は従来法を用いて粒子像の重心から求め,光軸方向位置推定結果と合わせることで3次元位置推定を実現する.本手法では機械学習により推定する推定モデルを構築した.データセットとして粒径の異なるポリスチレン粒子を用いて様々な光軸方向位置での粒子像を撮影し,強度分布を得た.そのパターンを主成分分析及びウェーブレット変換を用いて解析することにより,粒径と光軸方向位置の決定に利用可能な特徴を抽出し,判別指標として用い推定モデルの構築を行った.また,モデル評価はクロスバリデーション法を用いて行った.結果として,両者とも粒径と光軸方向位置を同時に推定することは可能であり,主成分分析の方がより高精度に推定可能であることが明らかとなった.ウェーブレットによる手法は,精度は劣るもののノイズ除去も同時に可能な手法なため,ノイズの乗った画像を処理する場合においては有用である可能性がある.