そこで本研究では,スマートフォンに搭載されていながら今まで使われていなかった新しいセンサとして,携帯端末使用者が行うタッチ操作の挙動に着目し,アプリケーションの種類やユーザの状況によって変化するタッチ操作を分析することで,操作者のプロファイルや内面的なコンテキストを推定することを目標とする.まず,タッチ操作の挙動をセンサとして利用するために,AndroidOS(Operation System)が出力するデバイスログを常時解析して,タッチ操作の挙動を認識するシステムを開発した.このシステムはアプリケーション非依存で全てのタッチ操作を取得可能である.加えて提案システムは,ログ解析により得られる指の本数や,挙動中の点データ,始点終点の位置関係を利用して,ユーザが日常的に行う8つのタッチ操作の識別が可能である.開発したシステムを評価するため,システム評価用のアプリを開発し,開発したタッチ操作の挙動識別システムの評価を行った.
またこのシステムを用いて,内面的で固有なコンテキストの推定に先立ち,タッチ操作から得られるコンテキストの1つであるユーザの「スマートフォンを操作しているユーザのの手と指(以降,操作形態)」を識別するアルゴリズムを提案する.タッチ操作の操作領域とスワイプの弧の向きを分析し,組み合わせることで,7つの操作形態の識別を実現している.提案システムは,20人の被験者による評価の結果,7つの操作形態を60%以上の確率で判定可能であることがわかった.