快適度を考慮した電力ピークシフト貢献行動を学習可能なシリアスゲーム

中村 仁美 (1351079)


現在日本では,消費者の需要に合わせた発電を行っている. この発電方法においては,ピーク需要の平滑化(以下ピークシフトと呼ぶ)を行うことでより効率のよい発電を行うことができる. ピークシフトを実現するためには消費者の協力が不可欠であるが,一般に,電力消費者にはピークシフトに関する知識がない. 本研究では,ピークシフトに貢献するような行動を消費者に学習してもらうためにシリアスゲームを提案する. 消費者にゲームで学習してもらうことによりモチベーションの低下を防ぎ,自発的かつ長期的な学習を促す.

提案するゲームでは,複数の仮想的な居住者(以下アバタと呼ぶ)が1つの集合住宅に居住し,実際の消費者と同様の生活スタイルで電力消費行動を行う. プレイヤは,アバタの消費行動予定を操作することができ,アバタの消費行動予定をピークシフトさせることにより,プレイヤはゲーム内のポイント(以下貢献ポイントと呼ぶ)を獲得できる. 本ゲームは,消費者の快適度をなるべく低下させないようなピークシフト貢献行動を学習してもらうことを目的としている.

消費者がピークシフト貢献行動を学習するためには,(1) 電力を共用する地域(あるいは世帯の集合)全体の電力のピークおよび使用予定が分かること,(2) 各居住者の電力消費行動(家電などの使用に対応)の時間帯をずらすことによりその居住者の快適度がどれだけ低下するかが分かること,の2つの要件を満たす必要がある. 要件(1)を満たすために,本ゲームでは各アバタの電力消費行動を縦方向が消費電力,横方向が使用時間を表すブロックで表示する. また,要件(2)を満たすために快適度というパラメータを設定し,アバタの生活スタイルによって予定変更の際に快適度が低下する仕組みを導入する.

本ゲームの有効性を評価するために,3人の被験者にゲームを約1時間半プレイしてもらいプレイヤの習熟度やゲームへの熱中度の評価を行った. 結果,ゲームプレイ序盤では快適度が30%まで下がるような予定変更を行っていたが終盤では快適度の低下が起こらない予定変更を行うことができ,予定変更の回数も低下することを確認した. また,実験終了時にゲーム内の予定変更1回における貢献ポイントの獲得効率が平均345(pt/回)増加しており,プレイヤがゲームを継続してプレイすることによりゲーム内で効率の良い予定変更を行えるようになることがわかった.