短時間睡眠支援に向けた脈拍を用いた入眠時刻推定
永田 大地 (1351077)
生活の中で人は,睡眠不足などから発生する眠気によって作業への集中力を損なう.
作業効率の低下を防ぐ方法として短時間睡眠が注目を浴び,推奨されている.
短時間睡眠の効果を高くするには適切な睡眠時間で起床する必要があるが,経験的に長く寝過ぎる可能性が高い.
目覚ましを利用した場合,起床は固定の時刻となることから寝付きが悪いと,予定より短い睡眠時間となり,効果的な睡眠とはならない.
そこで,入眠時刻を推定し,その時刻を基準に適切な時間が経過した後にアラームを鳴らし起床を促すことで適切な睡眠時間を確保できると考えた.
本研究では,入眠時刻の推定手法として,脈拍を用いた手法を提案する.
従来の加速度センサを用いた体動検出ベースの手法では,机での昼寝のような状況では体動が検出されず入眠推定が困難であること,使用環境を考慮した簡易的なシステム導入を目指しており,脈拍であれば様々なウェアラブルデバイスが市販されている上に,スマートフォンのカメラを使って簡易的に取得できること,が脈拍を用いる理由である.
提案手法における覚醒か睡眠の睡眠段階の判定は,市販の睡眠計を Ground truth とした機械学習によって実現した.
ここで,睡眠段階推定の最も標準的な手法は脳波と複数の生体データを複合的に利用した睡眠ポリグラフ検査であるが,睡眠計は睡眠ポリグラフ検査と比較して高い相関を持つ.
予備実験として, 6 名の被験者,計 8 回の睡眠において睡眠計と脈拍計,また脈拍数の Ground truth として心拍数の同時計測を行い,学習に用いるパラメータとして脈拍数の平均と分散を選定した.
提案手法の評価実験として, 5 人の被験者で 5 回の睡眠のデータを用いて判定を行った.
実験では,睡眠段階が覚醒か睡眠かの判定において,それぞれ適合率が約 0.71,再現率が約 0.62 で分類できることが分かった.
また,その分類結果に従った入眠時刻の推定精度は誤差 300 秒以内であり,平均誤差は 192 秒であった.