近年,カーナビゲーションシステムに代表されるような効率重視の経路推薦だけでなく,景観などを考慮した娯楽性の高い経路を推薦する手法が提案されている.しかし,自動二輪車ユーザの多くが重視する走り心地を考慮した経路推薦手法は未だ提案されていない.
そこで本研究では,自動二輪車の走り心地を定量化し,ユーザの嗜好に応じた走り心地を得られる経路の推薦を目指し,ユーザの好みに応じた経路の価値の推定手法を提案する.
経路の価値を推定するため,走り心地の定量化手法と,ユーザ嗜好の個人差の反映手法について検討し,走行中の走り心地を道路形状とその道路における走り方を用いて定量化する.ある走り心地に対するユーザの主観評価を用いて学習したモデルによりユーザの嗜好を表現した.
予備実験において,道路のクラスタリングに用いる各特徴量が実際の道路形状や走り方を反映しているかを検証するため,地図データから得た道路特徴量と走行履歴から得た走行特徴量をそれぞれ道路形状,走り方が異なる道路同士で比較し,各特徴量が期待通りに道路形状や走り方の特徴を表していることを確認した.実験において,提案システムにより収集したユーザの実際の評価値と提案手法により算出した経路の価値を比較し,手法の精度を検証した.実験の結果,評価値と経路の価値との誤差が±10%に収まる割合が70.7%,誤差が±20%に収まる割合が89.7%という推定精度が得られた.