自動車走行データ分析に基づいたドライブパフォーマンス向上支援手法

鈴木 貴裕 (1351061)


 燃費や走行速度などの自動車の走行時の特性は,一般に,走行する道路や運転者によって異なる. 目的地までの運転者・同乗者にとっての運転の満足度(ドライブパフォーマンス)を高めるための1つの手法として, 運転者のスキルを分析し運転改善のフィードバックを与えることで運転を改善する方法が考えられる. 本研究においては,ドライブパフォーマンス(DP)を「速度」「燃費」及び「車体の揺れ」の3要素から決定されると定め, これらの3要素から決定されるDPを運転中にリアルタイムに向上させる手法を提案する. 各DP項目を運転中にリアルタイムに向上させるには,ドライバの現在の運転スキル および走行道路の特性に応じて,無理のないDP項目の目標値を設定し,誘導することが望ましい. そのためには,各DP項目および走行道路の特性に対し, (1) ドライバの運転スキルを診断できること, (2) 運転スキルに応じた目標値を設定できること, (3) ドライバが運転中に効果的に目標値に誘導できること,が要件となる. 本研究においては,多数の走行中の車両の走行データが位置情報と共に収集されている フローティングカーデータインフラが構築されている環境を想定し, 要件(1)-(3)を満足する手法を提案する.提案手法では,要件(1)を満たすため, このインフラにより収集されたDP項目値の分布に対して,診断対象ドライバの運転データを 相対的に比較する事で,ドライバの運転スキルを診断する. また,要件(2)を満たすため,このDP項目値の分布をいくつかに分割し, レベル付けする事でドライバの技能レベルを定義し, 技能レベルから無理なくDP項目の目標レンジを動的に設定するシステムを提案する. さらに,要件(3)を満たすため,効果的に運転技能を向上させるために,技能レベルと目標レンジとの乖離 をグラフィカルに実時間表示するインタフェースを提案する. 提案手法の実現性を示すため,被験者10名により,山道,郊外道路,混雑区間といった道路を含む10kmの経路を走行し, 各DP項目におけるドライブパフォーマンスの分布を調査した.定性・定量評価の結果, 1.分割数を10にする事で運転者の技能レベルが推測できること, 2.個人の運転技能の高低に加え運転環境がドライブパフォーマンスに影響を及ぼすこと, 3.ドライブパフォーマンスを計測するためには運転環境に合わせたDP項目の選択が必要であることを明らかにした.