路車間通信を対象としたレートアダプテーション機能の提案と評価

佐原 壮海 (1351053)


既存のレートアダプテーション機能(RA)は主に室内などの移動性の低い環境を対象としているため,路車間通信のような移動環境においては,チャネル品質の変動に適応した伝送レート選択を行うことは困難である.本論文では,まず,移動環境における既存 RA の通信性能をシミュレーションにより評価し,問題点を明らかにする.そして,移動時のチャネル品質の変動に適応するための RA として,データセットを利用した RAD(Rate Adaptation with Dataset)を提案する.本方式の主な特徴として,以下の 3 つがあげられる.まず,1 つ目として,統計情報のみに依存するのではなく,自車のコンテキスト情報を基に,データセットから最善の伝送レートを選択する.ここでデータセットとは,車両の移動速度と位置に対する最善の伝送レートのまとまりである.2 つ目に,移動時のチャネル品質の変動に迅速に適応し,また,チャネルを効率よく利用するために使用する伝送レート数を削減する.3 つ目に,データセットからの伝送レート情報が適切でないときでも,実際のチャネル品質を考慮した伝送レート選択を行う.高速道路を想定したシミュレーション評価により,既存 RAと比較して RAD の FTP/CBR 通信の通信量がともに向上したことが確認された.結果では車両が 10 台のときに FTP は最大で 2.52 倍に,CBR は最大で 3.94 倍になることを示した.