複数の透視投影歪みの排除基準を用いた画像修復

笹尾 海斗 (1351048)


写真についた傷などの画像内の不要な部分を取り除き,その欠損領域を自動的に修復する画像修復に関する研究が広く行われている.従来,パターン類似度を用いて欠損領域全体の尤もらしさに基づくエネルギー関数を定義し,それを最小化することで欠損領域を修復する手法が提案されている.さらに,ユーザの手入力を介して画像内の透視投影歪みを排除し,画像修復を行う手法が提案されているが,ユーザの手入力には専門的な知識や経験が求められる.一方で,自動で透視投影歪みを考慮した画像修復も提案されているが,対象が人工物などにより構成される消失点が容易に検出できるシーンに限定されている.以上を踏まえ,本発表では様々なシーンに対応した自動的な画像修復の実現を目的として,複数の透視投影歪みの自動排除を実現する手法を用いてそれぞれ歪みの排除および画像修復を行い,修復結果を元の見え方に戻したあと,その中からユーザに使用したい修復結果を選択させるシステムを提案する.本研究では自動的な透視投影歪み排除の手法として,テクセルの大きさを均一化する手法,行列のランクを利用する手法,消失点を利用する手法を用いる.また,これらの手法では透視投影歪みを排除することのみを目的としているため,歪み排除後の画像の解像度を任意に設定できる.そこで,本研究では,修復結果を元の見え方に戻す際にボケが生じないよう,入力画像における欠損領域の最大解像度を考慮し,自動的な解像度の調整を行う.実験では,まず透視投影歪みを擬似的に再現した複数の画像を用い,透視投影歪みの程度と修復結果の関係を検証する.また様々な実画像に対して欠損領域の修復を行い,主観的評価実験による従来手法との比較により提案システムの有効性を示す.