道路交通網上でパケット配送を実現する距離ベクトルルーティング手法

阪口 紘生 (1351047)


近年,車同士が自律的にネットワークを構築して相互に情報交換をするVANETの研究が盛んに行われている.VANETにおいては位置情報を利用して宛先基地局までパケットを配送するジオメトリックルーティング手法が主流であるが,宛先までの通信路を確保するには一定以上の車両密度が必要である.車両密度が低い環境においては,他の車両が通信範囲に入ったときにパケットを転送するDelay Tolerantな経路制御も提案されているが,宛先までの高いパケット到達率を保証することができない.

本発表では,上で述べた問題点を個別のVANETルーティング手法に触れた上で解説し,次のような手法を提案する.まず路側に,広域ネットワークに接続しない低コストな無線基地局を設置し,基地局間をマルチホップ通信し宛先までパケットを伝送する新たな車々間ネットワークの形態を提案する.そしてそのようなネットワーク上で動作するルーティング手法を提案する.具体的には,無線基地局をルータ,車両をパケットキャリアと見なし,距離ベクトルルーティング手法を拡張して適用する形となる.ルーティングでは,道路内の車両交通流を帯域と見立て,メトリックを算出し,交通流の多い道路を優先的に選択する.さらに,車両密度が多い時には基地局から次の中継(宛先)基地局までの間を車々間通信を用いてアシストすることで遅延性能を高める.また,基地局において,宛先基地局までの到達確率を基に一定以上のパケット到達率が得られるようにパケットを複製し,信頼性の高い通信を実現する.

提案手法がどの程度性能を発揮するかを確認するため,車両密度が高いときと低いときの2つのシナリオでそれぞれジオメトリックルーティング手法のひとつであるGPCRとDTN手法の1つであるEpidemic Routingと比較実験を行った.これらの結果を踏まえ,最後に今後の課題と最終的な展望について発表する.