NAIST-IS-MT1351038: Yuka Kume


 

スマートフォンを活用した斜面モニタリングシステムと気圧情報に基づく分散ルーティング手法

久米 由花 (1351038)


本研究の目的は,山間部における土砂災害後の短期的な経過観察システムを低コストに実現することである. 経過観察システムには一般的にセンサ付きの情報 杭が利用されるが,情報杭は価格が高いという問題点がある. そこで,低コスト化するため情報杭の代わりに利用されなくなったスマートフォンを利活用し,基本的に通信料金が発生しないアドホック通信によるデータ集約を行う方法を提案する. 本論文で提案する手法は2つの新規性がある. 1つ目は,スマートフォンに搭載されている WiFi-Direct と Bluetooth を組み合わせたアドホック通信である. 2つ目は,スマートフォンに内蔵された気圧センサを用いたルーティング手法である. 前者は,スマートフォンを用いて効率的なマルチホップネットワークを構築するために,内蔵された2つの通信インターフェースを同時に利用する. 単一の通信インターフェースを用いて MANET を構築した場合,時分割で接続先を切り替える必要があるが,複数の通信インターフェースを組み合わせることにより必要なくなり,データ転送時間の短縮が期待できる. 後者は,このマルチホップネットワークにおいて,ルーティングに関わるメッセージ数を削減する手段として,各端末が自律分散的に入手可能な情報によって情報を集約する. 気圧情報 の利用により,既存ルーティングプロトコルで必要であった経路表の作成や端末情報の取得が不要になるため,メッセージ数や消費電力を抑制できると考えられる. Android アプリケーションとして提案システムを実装した結果,WiFi-Direct と Bluetooth を相互に使ったマルチホップネットワークが実現可能であることと,気圧を使った自律分散ルーティング手法が動作することを確認した.