在宅高齢者のための安価なデバイスを用いた足圧中心追跡タスクによるバランス能力の評価

折戸 靖幸 (1351029)


高齢者の転倒は,骨折等の怪我を引き起こすだけで無く,それをきっかけに寝たきり状態をも引き起こす重大な問題である. 簡便な装置・手法を用いてバランス能力を評価する事が可能になれば,在宅の高齢者に対して転倒の危険性の指摘や能力維持のためのトレーニングが可能になる.

そのため本研究では,安価なゲームデバイスとして知られているKinectとWii Balance Boardを統合する事によって被験者の全身の関節位置及び足圧中心(Center of pressure: CoP)を計測するシステムを開発した. そして,提案システムの精度を確認するために,3Dモーションキャプチャとの比較を行った. その結果,提案システムはバイアスを補正する事によって誤差が5度未満の実用的な精度で関節位置を計測可能である事を明らかにした. 次に,目標信号を自身のCoPによって追跡するCoP追跡タスクからバランス能力が評価可能かを調べるため,高齢者および若年者にCoP追跡タスクを課し,その様子を提案システムによって計測した. そして,計測されたデータから追跡信号とCoP間の周波数応答及び関節トルクの推定を行った. その結果,高齢者は若年者に比べ目標に追従する能力は低下しているものの,関節間の協調は低下していない事が明らかになった. また,バランス能力の評価指標であるBerg Balance Scale (BBS)と周波数応答の平均利得には,BBSが高い被験者ほど平均利得も高いという傾向が見られた.