スマートホームにおける消費電力センサと屋内位置センサを用いた生活行動認識システム

上田健揮 (1351010)


効果的な省エネ家電制御や見守りなどのコンテキストアウェアサービスを実現するためには, 家庭内における生活行動の認識が必須である.これまで,行動認識に関する研究は 数多く行われているが,(1) 多数のセンサを使用するため導入・維持コストが高い,(2) カメ ラやマイクを使用するためプライバシーを侵害する,(3) 認識できる行動種類が少ない または認識精度が低いなどの課題が残されている. 本研究では,上記3つの課題を全て解決することを 目指した生活行動認識システムを提案する.提案システムでは,課題(1)(2)を解決する ため,今後の低価格化・普及が見込め,カメラ等に比べプライバシー露出への抵抗が少 ないと考えられる電力計および屋内位置センサのみを用いることとする. 課題(3)を解決するためには,(i) 多数の行動に対するセンサデータの記録と各行動に 対応する教師データの抽出,(ii) 教師データに対する効果的な特徴量の選定,(iii) 適切 な機械学習アルゴリズムの選定を行う必要がある.本研究では,(i)を容易に行うため, スマートホームにおいて記録されたセンサデータを可視化し,任意の時系列データを 容易に各行動に対応づけることが可能な生活行動可視化・ラベリング支援ツールを開発 した.(ii)(iii) については,教師データのサンプル長,特徴量の種類,機械学習アルゴリズム の様々な組合わせに対する予備実験を行い,最も認識精度が良くなるサンプル長,特徴量の 種類,アルゴリズムの組合わせを決定した. 4人の被験者による3日間ずつの生活に伴うセンサデータを用いて複数の学習モデルを構築し,評価実験を行った. その結果,教師データのサンプル長として5分,特徴量として消費電力の平均値と位置の中央値,機械学習アルゴリズムとしてRandom Forests を用いて学習モデルを構築したところ, センサデータの粒度が最も細かい場合(位置推定誤差: ≦ 0.1m,電力計: 16個)平均91.3%の精度で10種類の行動を識別できた. さらに,導入・維持コストの抑制を想定し,電力計の数および位置測定の精度を低下させる環境下で評価した結果, センサデータの粒度が最も粗い場合(位置推定誤差: ≦ 1m,電力計: 3個)でも,84.5%の識別精度を達成した. この結果から,屋内位置センサと電力計のみを用いて,90%以上の高い識別精度を達成できること,より低コストのセンサセットを用いた場合でも,80%以上の識別精度が達成できることが分かった.