コンテキスト認識に基づいた人に対する適切な割り込みタイミング推定

赤池 勇磨 (1351001)


近年,スマートフォン及びモバイルネットワーク網の進展により, ``LINE'' や``Twitter'' といったリアルタイム性の強い双方向通信サービスが広く利用されるようになった. これらのサービスでは,サービス側からプッシュ型でメッセージや情報が次々と通知される.その結果,ユーザは素早く情報に気づくことができる反面,集中力の低下やストレスといった問題点を引き起こしている.このような作業の中断を引き起こす情報通知のことを,人に対する``割り込み'' と呼び, この割り込みをより適切に行うことを本研究の目的とする.%この割り込みのタイミングが悪い場合,

本研究では,適切な割り込みタイミングの推定に向けて,スマートフォンから得られるデータに基づく行動推定の可能性を示すと共に,タスクの難易度とユーザコンテキストに基づいた応答時間推定モデルを構築する. さらに,忙しさを5段階で定義し,ユーザコンテキストに基づいた忙しさ推定モデルを構築する.

まず,行動推定の可能性を確認するために,スマートフォンデバイスに内蔵されたセンサを用いて人の行動履歴や運動データ,端末の操作挙動,アプリケーションの使用履歴を取得し,行動の種別やユーザコンテキストの推定について検討した.その結果,身体的な活動データをオフラインログ,Web 上での活動データをオンラインログとして収集し分析した結果,それらのデータからある程度行動を推定できることがわかった.

次に,モデル構築のために,``LINE'' を用いた割り込み実験を行った.9人の被験者に対して,定期的にさまざまな難易度のタスクを連絡し,その通知に対する応答時間を計測すると同時に,受信したときのユーザコンテキスト(どこで何をしていたか)情報を収集し,機械学習によってユーザコンテキストに対する応答時間推定モデルと忙しさ推定モデルを構築する.

応答時間を「5 分以内」「1 時間以内」「1 時間以上」の3 種類に区分した場合,本応答時間推定モデルは50 %以上の精度で応答時間を推定することができ,ランダムに応答時間を推定する場合よりも20 %改善できることが明らかになった.また,提案する忙しさ推定モデルについても,メッセージ受信時の受信者の忙しさ(5 段階)を72 %の精度で推定可能であることがわかった.