スマートフォンの光を用いた地下街・大規模ビル向け避難誘導方式

冨永 拓也 (1251069)


停電時の地下街における避難手法の一つに避難誘導灯を用いる手法があるが,森山らの研究によると,避難誘導灯を頼りに避難した者は2割程度に留まることが明らかとなっている.この手法では避難者らが最短ルートで避難できるとは限らないため,地下街に取り残されるおそれがある.

そこで本発表では,従来法の問題を解決する,避難者の携えるスマートフォンの発する光(バックライトとフラッシュライト,総じてスマホライト呼ぶ)を用いる避難誘導方式を提案する.提案法は,避難者が床を見た際に,避難すべき方向(避難方向)に光が流れるように見えるよう,各スマホライトを制御する.避難者は光が流れるように見えた方向に避難すればよい.

提案するシステムは避難誘導装置と避難者の携えるスマートフォンから構成される.避難誘導装置は避難誘導灯にビルトインし,電源は避難誘導灯の蓄電池を利用する.また,避難誘導が必要な状況をスマートフォンに知らせるため,避難誘導装置に無線LANを具備する.停電以降,避難誘導装置は,避難誘導アルゴリズムの開始を知らせるパケット(開始パケット)を近隣のスマートフォンにブロードキャストする.開始パケットを受信した各スマートフォンは,あらかじめ設定されている自律分散型アルゴリズムにしたがって,Wi-Fiフィンガープリントによる位置推定を行い,避難者から見て避難方向に光が流れるように見えるよう,スマホライトを制御する.

避難者の目線による3D動画を生成し,アンケートにより評価した結果,避難者が床を見ることで,避難方向に光が流れるように見えることを確認した.また,Wi-Fi fingerprintingによる位置推定の予備実験を行い,提案法を実現するために必要となる位置推定精度が得られることを確認した.最後に,実機実験の実施計画を述べる.