パターン類似度を用いたエネルギー最小化による 事例参照型画風変換

常松 佑太 (1251066)


近年,油絵や鉛筆画など芸術的な表現を持つ画像を生成する非写実的画像生成(NPR: Non-Photorealistic Rendering)が盛んに研究されている. 特に,実写画像を非写実的な画像へと変換する手法はNPRの一分野として研究されており,これらはフィルタベース型アプローチと事例参照型アプローチに大別される. フィルタベース型アプローチは,平滑化フィルタやエッジ強調フィルタなどを応用し,デッサン調やパステル調などの特徴を再現する.このアプローチでは,画風変換を行う原画像を対象に,ユーザがフィルタのパラメータを画像を見ながら試行錯誤的に調整し,理想とする生成結果に近づけていくプロセスが必要である. 事例参照型アプローチでは,参照画像を用いてその特徴を反映させるように原画像を変換する.入力として,画風変換を行う原画像とは別に,ユーザが希望する特徴を持つ参照画像も必要となるが,フィルタベース型と比べて調整すべきパラメータが少なく,ユーザの負担は小さい.

我々は,特に事例参照型アプローチに着目し,実写風景画像を原画像,絵画を参照画像とした新たな事例参照型画風変換システムを提案する. 具体的には,生成画像と原画像間の輝度差,および生成画像と参照画像間のパターン類似度の双方を利用したエネルギーを新たに定義し,エネルギー最小化により参照画像風の画像生成を行う. これにより,原画像の情報を大きく損なうことなく,生成画像に対して参照画像のテクスチャと色調を同時に反映することが可能となる. 本発表では,まず現在の画風変換手法を概観し,本研究の位置づけを述べる.次に提案手法の概要を述べる. 最後に提案手法による画像生成実験の結果を考察し,提案手法の有効性を示し,今後の課題を述べる.