本研究では遠隔環境間におけるメンバのプライバシに配慮したアウェアネス支援の実現を目指す. 研究室やオフィスなどの共同活動組織において,他のメンバがどのような状況にいるかを把握することは,円滑なコミュニケーションやコラボレーションを実現するための重要な要素である. しかしながら,遠隔環境間におけるアウェアネス支援には,プライバシの問題が常につきまとう. そこで本研究では日常生活を共にする中で獲得される事前共有知識に着目し,共在人数(同一空間における共にいる人数)の伝達により,プライバシに配慮したアウェアネス支援を目指す. 伝達手段として,共在人数の可視化を行う3種の異なる表示形式(リスト表示,花形表示,渦巻き表示)を提案する. 本研究ではこれらの提案手法に基づき遠隔アウェアネス支援システムを作成し,著者の所属する研究室のメンバを対象とした被験者実験を通じて,その妥当性を検証した. 実験の結果,共在人数の共有がGPSなどを用いた場所情報の共有と比べ,プライバシに配慮できていることを確認した. また全ての提案表示形式において80%以上の推測精度があったことから,共在人数という僅かな情報の提示であっても,事前共有知識を持った間柄においては高精度で推測が行えることを確認した. 提案した3種の表示形式においては,リスト表示が最もプライバシに関して抵抗を感じる被験者が少なく,最も推測を行いやすいと答えた被験者が多かったものの,推測精度が81%と提案表示形式の中では最も低かった. 花形表示は,プライバシに関する抵抗感・推測精度の両方において,リスト表示と渦巻き表示の中間に位置する結果が得られたが,この表示形式の特徴である花びらによるその時刻における標準的な共在人数の可視化が,共同活動に対するモチベーションを生じさせる可能性が見られた. 渦巻き表示は最もプライバシに関して抵抗感を感じる被験者が多かく,推測精度が91%と最も高い表示形式であることが示された.