前頭前野および運動野−基底核ループにおけるタスクと運動の情報表現

吉澤 知彦 (1251116)


 大脳皮質−基底核ループは運動制御に関わる一方で報酬に基づく意思決定にも関与している. これまでの意思決定の研究では選んだ選択肢や報酬の有無といったタスクレベルの情報が大脳皮質−基底核ループにコードされているかが主に調べられてきた.しかし大脳皮質-基底核ループが運動制御に関わることを合わせて考えると,実際にはタスクレベルの情報を運動パラメータ(歩行の速さ,加速度,運動方向など)のレベルでコードしている可能性も考えられる.

 本研究では選択課題中のラットをモーショントラッキングし,同時に背内側線条体,前頭皮質,1次運動野の神経活動を電気生理的手法により記録した.そして選択課題中のニューロンの発火に相関している変数をステップワイズ法による重回帰分析で調べた.その結果,これら3つの脳領野におけるニューロンの発火は音の種類や選んだ選択肢,報酬の有無といったタスクレベルの情報だけではなく,ラットの歩行運動の速さ,加速度,運動方向といった運動パラメータとも相関していた.さらに選んだ選択肢によって発火率に差が生じるニューロンの中に運動パラメータのレベルで選択肢の情報を表現しているニューロンが存在した.このことは大脳皮質−基底核ループにタスクレベルの情報を運動パラメータのレベルで表現するニューロンが存在することを示している.

 背内側線条体,前頭皮質,1次運動野のニューロン発火が自己中心的に表現された運動方向と外界中心的に表現された運動方向のどちらでより良く説明されるか回帰分析の決定係数により比較したところ,自己中心的な表現による決定係数の方が有意に大きかった.この結果はこれら3つの脳領野において運動方向が自己中心的に表現されていることを示唆している.