重量センサを用いた冷蔵庫内におけるモノの種類および残量推定システム
山下徹(1251112)
冷蔵庫の中に残っている食材や飲料(以下,モノと呼ぶ)を記憶しておくこと
は,特に複数の利用者がいる場合に難しくなり,各利用者は買い物に行く前に,
しばしば冷蔵庫内の在庫状況を扉を開けて確認する必要がある.しかし,この作
業は面倒であり,また,冷蔵庫内における温度および湿度の上昇を招き消費電力
を増加させる.そのため,冷蔵庫のモノの管理を情報通信技術を使って容易化す
るスマート冷蔵庫に関する研究開発が盛んに行われている.しかし,既存研究に
おいては,モノの一つ一つに何らかのデバイスの取り付けしなければならない,
特定のモノしか対象としていない,使用後に戻されたときの残量の追跡を行えな
いなどの問題があった.本研究では,重量センサのみを使用し,特定の種類に限
定せず,モノおよびその残量の推定・管理を行う手法を提案する.本研究の課題
として,(1)冷蔵庫内に入っているモノの識別,(2)モノを使用した後の残量の
推定がある.提案手法では,モノの出し入れが一つずつ行われると想定し,予め
用意したモノの初期重量データベースから,出し入れされたモノを一意に推定す
ることで(1) を解決する.
また,庫内から取り出されたモノが使用後に庫内に戻されることを想定し,使
用前後の重量差からモノの残量を推定する.上記の解決方針を用いても,同重量
の異なるモノが存在する場合に判別ができないという問題が生じる.提案手法で
は,そのような場合に音声インタフェースを介してモノの種類を識別させながら
出し入れをする方式とスマートフォンを介してユーザに確認をとる方式を併用す
ることでこの問題を解決する.
提案手法の利便性や有用性を評価するため,提案手法に基づいたシステムを市
販の冷蔵庫内に実装し,3 名の被験者により,複数のモノを出し入れする際の推
定の正確さ,使い勝手に関する評価実験を行った.日常的な利用を模したモノの
出し入れを行った結果,100%の正確さで庫内の在庫リスト・残量が認識でき,ま
た,近い重量のモノの識別もスマートフォンのインタフェースにより正しく識別
できることを確認した.提案手法でモノを認識させる際に余分にかかる時間はモ
ノ一つ当たり平均4 秒程度と十分に少ないことが分かった.さらに,ユーザの利
便性に関するアンケートの結果,ユーザにとってあまり負担ではないということ
が分かった.