RFIDタグの利得変動に耐性を有するタグ位置推定手法

松田 勝志 (1251096)


近年、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)の進歩によって 1mm厚断層画像の作成が可能となり、極小の病変が発見可能となっている。 しかし、管腔をもつ臓器の場合、手術前には内視鏡によって病変の位置の確認が可能だが、 手術中には内視鏡が利用できず、また臓器形状が変化するため、病変の位置特定が困難となる。 この問題を解決するために、微小RFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いた病変位置マーキングシステムが提案された。 これは手術前に病変付近に微小なRFIDタグを留置しておき、手術中にはその留置されたRFIDタグの位置を推定することで、病変位置を特定するシステムである。

このRFIDタグを利用したマーキング手法は病変へのマーキング以外にも応用可能であると考えられる。 例えば、人工補綴にRFIDタグを埋め込み、そこに個人識別情報や治療情報を入れておくシステムが提案されているが、 RFIDタグに入っている情報だけでなく、その位置情報も正確に取得することが出来れば、人口補綴にずれが生じていないかなどの確認が可能となる。

このRFIDタグマーキングシステムでは、RFIDタグから送信された信号を複数の信号受信アンテナで信号を受信して、 そこから得られる信号振幅を利用してRFIDタグの3次元位置を推定するが、信号振幅から3次元位置を推定するためには、タグ利得情報が必要となる。 従来のRFIDタグマーキングシステムでは短期的なマーキングしか考慮していないため,このタグ利得の値を事前に取得可能としている。 しかし人工補綴に埋め込んで利用するなどの長期的なマーキングを想定した場合、タグ利得の値が変化してしまう可能性がある。 つまり従来のように事前にタグ利得の値を取得することが困難となり、正確にRFIDタグの3次元位置を推定できなくなる。

この問題を解決するために、本論文ではRFIDタグの3次元位置と同時にタグ利得も推定する手法を提案する。 この手法ではタグ利得の推定も行うので、事前にタグ利得を取得する必要がなく、タグ利得変化の影響による位置推定誤差の増加を抑制することが可能となる。

また受信信号振幅からRFIDタグの3次元位置を推定するためには、理論的な信号振幅減衰モデルが必要となるが、従来の研究で利用されていた信号減衰モデルは、 信号受信アンテナとRFIDタグとの相対角度の影響による信号減衰を考慮しておらず、正確な信号振幅減衰モデルにはなっていなかった。 そこで本研究では、この相対角度の影響を考慮した新たな信号振幅減衰モデルを提案する。

最後に、実測したRFIDタグからの信号振幅を利用し、3次元位置推定を行うことで提案手法の有効性の評価を行った。 その結果、提案手法はタグ利得が変化しても、その影響を受けずに3次元位置を推定することが可能であることがわかった。 また、信号減衰モデルを改善したことによって、位置推定精度が最大で14mm程良くなった。