NAIST-IS-MT1251076: Ohma Nakajima


 

光ピンセットを用いた引きはがし力計測システムの開発

中島 往馬 (1251076)


生体内では、タンパク質等の生体分子の構造変化や機能発現の際に分子間相互作用は起こっている。
その分子間相互作用の計測には従来は原子間力顕微鏡が用いられてきたが、原子間力顕微鏡では
カンチレバーを接触させて測定を行うため、生体試料を損傷させる可能性があった。そこで、カンチレバー
を用いずに分子間相互作用を測定する方法として光ピンセットを用いた手法が検討されている。
光ピンセットは、光の射圧を利用して微小物体を非接触、低侵襲で捕捉、操作を行うことができるもので、
生物分野では細胞の観察、操作や計測に用いられている。

本研究では、光ピンセットを用いて吸着粒子を引きはがすのに必要な力を測定することで相互作用力を
評価する計測システムを構築することを目的とした。吸着させた粒子を引きはがす力は分子間相互作用
の強さを示す指標として用いることができる。本計測システムでは、連続波レーザーまたはパルスレーザー
による光ピンセットを用いて、基板に吸着した粒子を引きはがす操作を行い、その際の引きはがしに必要な
力(引きはがし力)を計測する。引きはがし力は、光ピンセットの捕捉力を変化させて繰り返し引きはがし
操作を行うことで引きはがし力の分布を得る。ロジスティック関数を用いて解析することで平均引きはがし
力を求める。本システムの有効性を示すため、カルシウムイオン濃度を調整して粒子を吸着させた試料で
引きはがし力計測を行い、濃度によって引きはがし力が異なることを確認した。さらにストレプトアビジン
-ビオチンの特異的な結合の相互作用力の計測を行った。今後、多くの生体試料の力学的特性の計測
に応用することで、生体分子間相互作用の機能解明に資することが期待される。