脳血流計測を用いたプログラム理解の困難さの測定

中川 尊雄 (1251075)


プログラム理解は,ソフトウェア開発の幅広い工程で必要とされる重要な活動であるが,脳の機能によって実現される内的な知的活動であり,その計測は用意ではない.神経科学分野では,こうした知的活動を観測するため,脳波や脳血流などの脳周辺情報を計測する試みが般的に行われており,脳の部位や活動量と知的活動の関係が論じられてきた.

本発表では,神経科学分野での知見をもとに,脳血流の酸化度合から脳活動を計測する近赤外分光法(Near InfraRed Spectroscopy; NIRS)を用いて,開発者がプログラム理解中に困難を感じる状態にあるかどうかを定量的に被験者実験で観測することを試みた修士論文の内容について紹介する.

本研究では,10名の被験者に対して,難度の異なる二種のプログラムを読解する際の脳血流を計測する実験を行い,10名中8名において難度の高いプログラムの読解時に脳活動がより活発化するという結果が得られた.また,被験者ごとに脳活動をZ-scoreを用いて正規化し,時系列データを難度別に集計した結果,難度間の脳血流の平均値に有意な差(p<0.001)が見られた.本結果は,プログラム理解時における脳血流計測が,開発者のプログラム理解が困難な状態を定量的に観測できる可能性を示している.