安全性と快適性に着目したすれ違い行動予測に基づく自律移動型車いすの制御法

田中勇記 (1251059)


車いす利用者にとって,衝突を回避する「安全性」と,効率的に移動経路を選択する「快適性」という,相反する性質の両立が重要である.本稿では,自律移動型車いすにおいて,従来のように車椅子利用者についてだけでなく,移動中にすれ違う他者の心的距離まで考慮に入れつつ,安全性と快適性を実現する移動制御法を提案する.この移動制御には,周囲の人の動きを正しく認識して将来の移動経路を予測することが重要となる.

本研究では,車椅子と他者との相対的な位置関係や移動速度ですれ違いの軌跡パターンを表現し,すれ違いの軌跡パターンを予測する方法を提案する.予測法は,周辺他者の多様な移動特性を表現するため,事例ベースの手法により実現した.病院内の使用を想定し,通常歩行,車いす,台車,歩行器の4種類の移動手段を用いた被験者と車椅子がすれ違う実験を行い,提案手法で高精度な予測が得られることを示す.

さらに,この予測結果に基づいて,安全性と快適性の評価値が最大となるように車いすの経路を決定する制御パラメータの最適化を提案する.単純な制御法と比較して,提案手法による経路が,テストデータにおいても良好な評価基準が得られることを示す.