大規模災害時には，迅速な救助活動が重要となる．しかし，携帯電話の基地局等の倒壊により，既存の通信が使用できない場合，要救助者の情報を収集することが困難となる． これまで，このような通信被害地域において，スマートフォン間の直接通信を用いた要救助者情報収集手法としてSOSCastが提案されている． しかし、SOSCastに関する過去の研究ではスマートフォン間の直接通信による情報共有の有効性は少数台の実機により示されているが，都市部のような大人数が存在する環境での有効性については明らかになっていない．
本論文では，まず，大人数が存在する環境でのSOSCastの有効性について調査を行った． 調査の結果，SOSCastをエピデミック手法と比較すると，個々のスマートフォンの通信回数の削減はできているが，バッテリ消費量の削減が限定的であることが明らかとなった． 被災地では，バッテリの充電を行うことは困難であるため，バッテリ消費を考慮した情報共有手法が重要となる．
本論文では，スマートフォン間の協調動作により階層化クラスタを構築し，同一クラスタ内の一部のスマートフォンの通信デバイスを無効にすることで，バッテリ消費を削減した情報共有手法を提案する． シミュレーション評価により，提案方式は，既存方式に比べ，情報共有効率を低下させることなく，スマートフォンの生存時間を20%から30%程度向上可能であることを示した．