NAIST-IS-MT-1251056:高井 雄紀


 

PET装置によるアミロイドβの無採血定量診断の検討

高井 雄紀 (1251056)


PET(Positron Emission Tomography)やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)に代表される核医学イメージングはブドウ糖消費量、
局所血流量、酸素消費量、神経伝達物質の受容体分布などの生理学的機能情報を定量的に画像化する装置であり、近年のがん、認知症、動脈硬化性疾患などの
疾病の増加とともに、研究や臨床での普及が進んでいる。PETによる研究の一つにアルツハイマー型認知症(AD)に関する研究がある。新しく開発された
放射性薬剤によってアルツハイマー型認知症の原因因子とされるアミロイドβ(Aβ)と結合し、可視化出来るようになった。これらの診断、評価や病態の
正確な把握をするために、入力された放射能濃度(入力関数)を把握することによって定量的に評価をする必要がある。定量評価を行うには血漿中の放射能濃度を
測定するため、動脈血の採血が必要となってくる。この血漿中の放射能濃度の測定を無採血で出来るようになれば症例数の拡大を望むことができ、臨床応用への
展開も比較的容易になる。そこで我々は、PET装置を用いたAβのイメージング法による無採血定量化を目的とした。
この目的に向け、PET実験を動脈採血とともに行い、定量化に必要な入力関数を得るとともに無採血で入力関数を導く方法を検討した。
対象となった患者は白質病変患者であり、脳血流が健常者と比べ低くPiBの動態が脳血流に依存している可能性があるため、影響を受けない内頚動脈から
入力関数を得る手法を提案する。PET画像上の内頚動脈の位置をMRA画像で決定し、得られた全血のデータを血漿中の値に変換し、代謝された薬剤を除外することで
入力関数として使用する。PET画像は部分容積効果(PVE)の影響を受け内頚動脈などの小さい組織は過小評価して画像化されている。また、内頚動脈の周辺組織にも
放射能分布があるため、設定したROI内に内頚動脈由来ではない放射能濃度を除外する補正をかける必要がある。
PVEの補正のみを行った入力関数と周辺組織由来の放射能濃度を考慮するspillover考慮の補正式をかけた入力関数を比較した。PVEのみの補正では全体的に過大に
補正してしまったが、spilloverを考慮した補正ではピークからの減少をうまく表現でき、検査中どの時間帯においても概ねspilloverを考慮したほうが良い結果となった。