オージオグラムに基づくゲイン・聴覚フィルタ両特性の近似処理を用いた模擬難聴
神保 希美 (1251054)
音声は人類にとって最も基本的なコミュニケーション手段の1つである.音声には言語情報のみならず感情・個人性のようなパラ言語・非言語情報も同時に伝達可能であるため,音声の受聴に支障があるとコミュニケーション障害が起こる.例として難聴が挙げられる.難聴は聴覚器官に疾病があることで音声の受聴が困難となる.難聴者のコミュニケーション支援として補聴器による聴覚補償がある.しかし,難聴者の聞こえには個人差が大きく,補聴器に加え更なる支援法が望まれる.そこで,難聴者の聞こえを再現する模擬難聴を用いた支援法も挙げられる.健聴者が難聴者の聞こえを体感することで,難聴者に対する適切なコミュニケーション法を習得することができると期待される.
聞こえの大きい個々の難聴者の聞こえを精度良く実現するため,聴覚末梢系をモデル化した聴覚フィルタを用いた模擬難聴が提案されている.しかし,聴覚フィルタの測定には多大な時間・手間を要し模擬難聴の構築が容易でない.本発表では,精度を保ったまま容易に模擬難聴の構築を実現するためオージオグラムに基づいた聴覚特性の近似処理する模擬難聴を提案する.さらなる高精度化のため難聴レベルの調整機能を付与した.実験的結果から,提案法によって精度良く容易に模擬難聴の構築が実現したことを示す.