指先腹部の変形計測による滑り量推定
小林哲也 (1251046)
人の器用な物体操作には,指先などから得られる触覚情報のフィードバックが重要であることが知られている.物体操作時の触覚情報がどのように利用されているかを明らかにするため,様々な触覚情報処理に関する研究が行われている.しかし,触覚情報を計測するためには,操作対象物の改造する必要や掌にセンサを配置する必要があり,本来の操作状態から異なった状態となっているという問題があった.
そこで,本研究では自然な指先接触状態を保ったまま指先で発生する初期滑りを計測するための手法を提案する.(初期滑りの詳細な説明は2章を参照のこと)指の爪側に装着するセンサによって指腹部の変形を計測し,変形の時間応答から指先接触面に発生している初期滑りを推定する.センサには2つの歪ゲージが搭載されており,伝達関数モデルによってセンサ出力より初期滑り量を計算する.被験者・押付力・摩擦係数・指の移動速度のそれぞれの条件が変化した場合に,伝達関数モデルにどのような影響があるかを実験によって検証する.
実験結果より,条件を変えた場合でも,全ての条件を含んだデータにより作成されたモデルを用いることで高精度に初期滑りが推定できることを示す.