オープンソースソフトウェア開発における学術論文の貢献の分析
小西 文章 (1251043)
学術論文の評価は,被引用回数などの指標により,他の研究者への影響の強さとして定量化されてきた.一方,学術論文が産業界に与えた影響については,これまで十分調査されていない.本論文では,オープンソースソフトウェアのソースコード中のコメント文における学術論文の引用を分析することにより,どの論文誌が多く引用され,ソフトウェア開発現場(特に,プログラミング)に貢献しているのかを明らかにする.コード検索サイトOhloh に登録されているC言語とJava言語のプロジェクト(約15万件)を対象とし,ソフトウェア関連論文誌(Impact Factor上位50まで)について,ソースコード中のコメント文における引用回数を分析した.その結果,1980年代まではCommunications of the ACMの引用が多く,1990年代以降はACM Transactions on Mathematical Software やIEEE-ACM Transactions on Networkingの引用が多いこと,引用数の多い論文は標準偏差の計算アルゴリズムと輻輳回避に関するものであることなどが分かった.