ナビゲーションシステムが持つ利便性と経路記憶能力低下防止効果の共存

木村 歩賛名 (1251038)


我々の身の回りは便利な道具で溢れている.我々はこういったシステムの恩恵を受けて,より少ない時間,労力であらゆるタスクを解決することができるようになった.一般ではこれを豊かな生活と呼ぶことがある.しかし,その便利さは時にユーザのシステムへの依存とユーザの能力低下も招きかねない.本来ユーザ自身が解決できたタスクでも,システムを使用したことで能力の低下が発生し,自力で解決ができなくなる危険性がある.これはシステムが本来持つ,ユーザのサポートという目的からは大きく離れていると考えられる.本発表ではこの問題を解決すべく,現状のシステムが持つ利便性を維持しつつも,使用する過程で発生するユーザの能力低下を防ぐシステム設計を提案する.この実現はシステムと人間とのよりよい関係を築くことにつながり,本当の意味での豊かな生活を実現できるものと考えられる.その第一歩として本発表では典型例であるナビゲーションシステムを扱う.ナビゲーションシステムは道に迷わないための様々な機能を備えており,ユーザ自身の思考などの負担は大きく軽減される.しかしこの状況はユーザが本来持つ,自分自身で道を覚えて移動する能力を減少させる可能性がある.そこで本発表では使用する過程でユーザの移動のサポートと同時に道の記憶を促すシステムを提案する.このシステムは,ユーザが一度提案ナビを使用して移動すれば,再度同じ場所に訪れた際にナビを使用せずとも移動できるようになるというものである.この目的を達成するため,本発表では交差点比較により間違えやすい交差点や交差点の特徴を抽出し,ユーザが間違えうる危険地点をあらかじめ提示する手法を考案した.この考えに基づいたシステムを設計し,従来のナビや利便性の代わりに学習機能を備えたナビとの比較検証を行った.その結果,ナビの利便性がもたらす経路記憶への阻害を確認したほか,インタフェースの改善により利便性と学習効果の共存が可能である可能性が示された.