YAMATO:超音波センサガジェット付スマートフォンを利用した屋内フロアマップ作成支援システム

柏本 幸俊 (1251029)


近年屋内ナビゲーションが注目されている. 屋内ナビゲーションを行うには,距離誤差ができるだけ少ない屋内フロアマップの入手が重要となる.屋内フロアマップは施設管理者が提供するのが望ましいが,提供されてない場合はユーザがボランティアによって作成する必要がある.屋内フロアマップを作成する既存研究には専用機器を用いる研究とスマートフォンのみを用いる研究が存在する.専用機器を用いる研究では計測用ロボットやウェアラブルLiDAR 等を利用した屋内フロアマップ作成方法が提案されているが,高価で特殊なキャリブレーションが必要な上に,フロアマップ作成以外の用途への機器の転用が難しいという問題が存在する.また,スマートフォンのみを用いる研究では,スマートフォン内蔵センサのみでの部屋のサイズ・形状推定には限界があり,推定距離誤差が大きい.一方で,100 回以上の計測を行うことで比較的小さい距離誤差で屋内フロアマップを作成する研究も存在するが,測定の労力が大きいという問題が存在する.本研究では,ユーザが超音波センサガジェットを接続したスマートフォンを所持し,壁に沿って歩くことで,容易かつ低コストに少ない距離誤差で屋内フロアマップを作成可能なツールYAMATO を提案する.提案システムでは,超音波センサによってユーザと壁の間の距離を測定する.また,スマートフォンに内蔵された加速度センサによってユーザの移動距離を算出し,ジャイロセンサを用いてユーザの移動方向を推定する.これらのセンサデータより,壁の長さ,壁と壁の間の角度を算出し,部屋のサイズ・形状を推定する.また,この部屋サイズ・形状の推定を複数回繰り返し,測定データを統合することで,より正確なフロアマップを作成する.推定した各部屋のサイズ・形状を,屋内位置測位を用いてスマートフォン画面上のおおまかな位置に配置し,ユーザがスマートフォンの画面上で全ての部屋を適切に連結することで,屋内フロアマップを完成する.提案システムを実現するにあたり,十分に正確なフロアマップを取得するまでの測定労力を軽減することが課題となる.そこで,測定毎にガウシアンフィルタを適用し,外れ値除去を行うとともに,複数回の測定データを統合する時に補正関数を用いた加重平均を行うことで,この課題を解決する.YAMATO の評価のため,奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 A 棟4 階を用いて実験をおこなった.まず,測定労力を軽減する手法の評価を行うために,通路部分の測定データを用いてモンテカルロ・シミュレーションを行った.シミュレーションの結果,提案手法を用いなかった場合,部屋の長さ誤差最大10%以下で推定するには,33 回の計測が必要であったのに対し,提案手法を用いた場合,9 回で推定可能なことを確認した.また,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科A 棟4 階半分の屋内フロアマップを作成し,評価した.各部屋で5 回の計測を行い,提案手法を適用した結果,フロア全体で部屋の一辺の長さ誤差平均8.31%で屋内フロアマップを作成できた.