消費電力量を考慮したプリフェッチに基づくWiFiオフローディング手法の設計と評価

尾上 佳久 (1251027)


移動体通信加入者の増加,移動端末からのインターネットへのアクセス需要の増 加,さらにはスマートフォンの普及により,モバイル・データ・トラフィックが 急増して そ結果,3G/4G回線の周波数資源の逼迫し,通信断,通信遅延の増大などの 通信品質の低下が問題となっている. この問題を解決するために,携帯電話事業者は,公共施設や店舗などにWiFiアクセスポイントを 設置し,モバイルデータ・データ・トラフィックをWiFiを利用して固定回線へ逃す「WiFiデータオフローディング」に取り組んでいる. しかし,一つのWiFiアクセスポイントがカバーする通信可能領域は,携帯電話基地局の セルと比較して狭く,WiFiデータオフローディングする機会が少ないという問題を残している. この問題に対して,既存研究では,WiFiが利用可能になるまで,通信を待機する手法が提案されている. しかし,実時間性が重要なアプリケーションや,ユーザが頻繁に利用するアプリケーションに対して 既存手法を適用することによって,アプリケーションの使い勝手が著しく損なわれるおそれがある.

本研究ではアプリケーションの使い勝手を犠牲にすること無く,WiFiオフローディングの機会を増やす 手法を提案する. 提案手法では,WiFiを利用可能な間に,ユーザが今後3G/4G回線経由で要求する可能性がある コンテンツを予測しプリフェッチする. この手法を利用することで,3G/4G回線のみが利用な環境において,ユーザがプリフェッチ済みのコンテンツを要求した場合, そのコンテンツを改めて3G/4G回線で取得する必要がなく,瞬時にコンテンツをユーザに提供可能である. つまり,3G/4G回線の負荷軽減と同時にアプリケーションの応答性を向上可能である. しかし,プリフェッチに基づくWiFiオフローディング主方法では,ユーザが要求しないコンテンツをプリフェッチすることにより, WiFiオフローディングを行わない場合よりもバッテリを余分に消費する可能性がある. よって,本手法では,WiFiオフローディングに利用可能な電力量に制約を設け,その電力量のなかで オフロードするデータ容量を増やすかという課題を解決する. その課題解決へのアプローチとして,プリフェッチするべきコンテンツの有無をリモート・サーバに 問い合わせる回数を少なくすることで,WiFiオフローディングに利用可能な電力量の内, コンテンツのプリフェッチに利用可能な電力量の割合を増加させる.

提案手法の有用性を評価するために,WiFi APに接続した時刻や切断時刻,アプリケーションを利用した時刻など,スマートフォンを用いて収集された トレースを用いたシミュレーションを行った. シミュレーションによる評価の結果,提案手法は,3G/4G回線のみを 利用する場合よりも消費電力量を抑えながら,約5.1\%のデータ・トラフィックを オフロード可能であるこ.