進行方向制約を用いた大域的最適な複数対象追跡

岡田 亜沙美 (1251023)


広域にわたる交通流量解析やセキュリティのための監視システムなどへの応用を目的として,長時間動画における複数対象追跡を実現する.遮蔽などに頑健な複数対象のためには,全フレームで独立に人領域を検出したのち,各領域の座標,サイズ等特徴量を用いて領域間の類似度を計算し,フレーム間で大域的最適に連結するアプローチの有効性が知られている.反復的に動的計画法を適用することによって最適解を得ているが,グラフの構造上,類似度を計算したい隣接2フレーム間の静的特徴量から直接計算できる類似度しか参照できなかった.そのため,隣接2フレーム間からだけでは計算できない進行方向の差分のような動的特徴量は利用できず,その結果,人がすれ違う際に追跡結果が入れ替わり易いという問題があった.そこで,本研究はグラフを拡張することで,動的特徴量を利用し問題を解決する.グラフのノードは,領域の検出結果であり,特徴量のコストを保持させる.進行方向の差分のような動的特徴量のコストを計算するとき,一つのノードに対し複数のコストが存在する場合があるので,ノードをコピーすることで解決する.実験では,複数対象追跡問題における世界標準のデータセットであるPerson Re-ID2011 datasetとETHMS datasetを使い,提案手法の有効性を示す.従来法と比較して,提案手法によるグラフの拡張により追跡成功率が向上していることを定量的に確認する.また,提案手法の効果の典型的な例を画像で示し,目標としていたすれ違い時の追跡成功を実現できていることを確認する.