複数要因を総合的に考慮した夕食レシピ推薦手法の実装と評価

伊原 啓晃 (1251013)


本研究では,複数要因を総合的に考慮した夕食レシピ推薦システムの提案を行う. 夕食レシピの決定は,(1) 選択肢が多い,(2) 考慮すべき要因が多い,(3) 頻度が高い,という点で面倒であり,レシピの決定を支援してくれるシステムがあれば便利である. 既存研究では,「栄養」のみや「食材の好き嫌い」のみなど,一つもしくは少数のレシピ決定要因に重点を置いているものが多い. しかし,レシピ決定は「栄養」や「食材の好き嫌い」,「在庫食材の活用」など複数の要因が絡んで行われるものであるため,複数要因を総合的に考慮することが重要である. また,その点を考慮している既存研究も存在するものの,システムの動作に必要なユーザ情報の入力(レシピに対する好みなど)をいかに得るかについて十分な考慮がされておらず,実用性に問題がある. 本研究では,複数要因を考慮し,かつシステムの利用を開始するのに必要なユーザ情報の収集を効率良く行える方式を提案する. これを達成するための課題として,(1) レシピ決定における各要因の数値化方法,(2) 各要因をどの程度重視するかをユーザの価値観や生活スタイルに合わせて最適化する方法,(3) 最適化に必要なユーザ情報を効率良く収集する方法の考案が挙げられる. 課題 (1) については,Web アンケートや実態調査から「食材の嗜好」・「栄養」・「カロリー」・「調理の簡単さ(調理時間)」・「在庫食材情報」・「レシピの食事履歴(同じ料理の連続推薦の回避)」の6つを主要な要因として考慮し,各要因の数値化を行う. 具体的には,「食材の嗜好」に基づいた推薦では「材料の特異度と使用頻度の高い」レシピを,「栄養」に基づいた推薦では「より栄養の充足率が高い」レシピを,「カロリー」に基づいた推薦では,「より目標摂取カロリーに近いカロリーを摂取できる」レシピを,「調理の簡単さ」に基づいた推薦では「より調理時間が短い」レシピを,「在庫食材情報」に基づいた推薦では「在庫食材をより多く使用している」レシピを,「レシピの食事履歴(同じ料理の連続推薦の回避)」は「より直近に食べていない」レシピを推薦するよう,各レシピに対しスコア付けを行う. また,課題 (2),(3) を解決するため,上記6つの要因スコアを重み付き線形結合によって統合することで,複数要因を総合的に考慮したレシピ推薦を行う. ユーザごとの重み係数の調整を簡単に行うため,30 個程度のサンプルレシピに対しユーザが評価値をつけ,その結果をもとに,各要因の重み係数を求める方法を考案し利用する. 以上の提案手法に従ってプロトタイプシステムを実装し,6人の被験者により推薦結果に評価点を付けてもらう実験を行った. 提案手法を,1要因のみを考慮したレシピ推薦手法,およびランダムに推薦する手法と比較した結果,ベースラインである1要因のみを考慮したレシピ推薦手法・ランダムに推薦する手法の推薦結果が良いと評価した人が共に3人であったのに対し,提案手法による推薦結果が良いと評価した人が6人となり,提案手法による推薦が最も良いという結果が得られ,提案手法の有用性が確認できた.